夫婦ですが何か?
畏怖してというより肌を滑るその感触で鳥肌が立った。
その指先が速度を上げるでもなくゆっくり頬から首筋に移行し、そのまま下がり続け胸に触れる。
勿論、服の上から。
指3本程で滑り落ちていた手が、胸の位置でその大きさを示し広がり私の決して豊満でない胸の感触を確かめる。
これは・・・・襲われているのだろうか?
「・・・・・セクハラです」
「それって・・・夫婦間にも通用する?」
「じゃあ、DVでしょうか?」
「ふっ・・・ははっ、・・・本当・・・ああ言えばこう言うで可愛くないねぇ、千麻ちゃん」
ああ、不機嫌。
いつでも傍にいるのだから彼の感情の変化は嫌でもわかるのだ。
そしてそんな経験から理解するこの彼は本気で不愉快で苛立っている。
何故?
ああ、自分が追い詰めてなびかなかった存在がいないから?
私に愛情なんて抱いてなくても、拒まれた事実が自尊心を傷つけた?
冷静にそんな事を考えていれば、それすらも不満らしい彼の反応。
「だから・・・、あんまり俺を無視するのやめてよね?」
「・・・・申し訳ありません。考え事を・・・」
「それがムカつく・・・。事あるごとに契約だって振りかざして、自分は全く何も思ってないみたいに俺を拒んで」
「プライドを傷つけましたか?」
ああ、この発言は火に油。
言ってすぐに不機嫌が強まったと感じた。
瞬時に嫌味な笑みが強まるとグッと近づいた顔の距離。
間近から威圧してくるグリーンアイを不謹慎にも綺麗だと感じた。
そしてすぐに少し・・・・彼を思い出す。
それこそ私も愚かだと掻き消す様に意識を逸らした。
「ねぇ、千麻ちゃん。確かに俺たちの間に色めいた恋愛感情はないよね」
「その通りです」
「確かに契約一つで成り立って繋がっている夫婦だよ」
「否定の言葉もありません」
「でも・・・ね、」
弾かれる言葉の通りだと相槌を打っていたのに、不意にグリーンの危険性が強まると顎に絡みついてきた指先が顔の向きを固定する。
そして更に至近距離の眼光に捕らわれ息を飲んだ。