夫婦ですが何か?

ああ、でも、


本当に限界。


これ以上は・・・・・キツイ。


そう判断して視線を外した。


ギュッと目を瞑り上り詰めた不快感に歯止めをかける。


そしてゆっくりとそれを押し込んで、これだけは彼に伝えなければいけないと口を開いた。


ずっと、強く抱いていた後悔。



「私・・・・・・この結婚に後悔してません」


『・・・・』


「最初は・・・・ただの契約だと思ってたけど・・・・。

・・・・・・・あなたは・・・私には魔法使いだった。

見事馬鹿みたいだけど甘ったるい魔法にかけられて・・・、

気がつけば・・・・・・、」



ああ、涙声だ。


言葉に・・・・詰まる。


本当に・・・本当に・・・。



「愛してたの・・・・ダーリン・・・・」


『っ・・・』


「だから・・・・・・・・・【夫婦】になってくれて・・・ありがとう・・・・・」


『・・っちーーー』



言い切って、終了を押した。


多分、私の名前を呼びかけていた彼。


捉えている姿が驚いて携帯を確認してから身を乗り出して私を見つめる。


どこか必死に、慌てた様子で。


その姿をクスリと笑うと背中を向けて入口に歩き出した。





さよならダーリン。






「・・っ・・・だからっ、その間が狡いんだって!!千麻ちゃんーーーー!!!」






雑音掻き消し響いた叫び声に思わず足を止め振り返り、身を乗り出して私を不満げに睨む彼に一笑。


そうしてすぐに踵を返して外に出た。





「馬鹿ね・・・・ダーリン」





外に出て、長年奉仕した会社を見上げてぽつりとつぶやく。


思わず流れた涙を指先で取り除くと深く深く息を吐いて目を閉じた。







私と彼の夫婦として最後の会話。



悲しいかな、



最後まで夫婦漫才だったわね。














さよならダーリン。




































いつか・・・許せる日が来るのかしら?




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