夫婦ですが何か?
始めてしまえば馬鹿みたいに欲に溺れて、怯んだ彼女につけこむような時間の延々さ。
結果・・・後味の悪い勝利。
思わず苦笑いで彼女の頬に張り付いている髪を優しく取り除いて口づける。
本来白い頬がまだ余韻示すように熱や赤みを帯びて、今も耳や脳裏にはっきりと明確な扇情的な彼女の姿。
あー・・・・。
ダメだ・・・。
ごめん千麻ちゃん・・・。
「俺・・・おかしくなりそうなくらい千麻ちゃん愛してるみたい」
今更な告白だ。
しかも相手の意識は無いというのに。
それでも言わないと自分の中で破裂してしまいそうなくらいその感情が大きくて。
こうして改めて欲を埋めあえば更に・・・。
「・・・・寝顔・・・めちゃくちゃ可愛いや」
長い睫毛を印象的に降りた目蓋の寝姿は何の駆け引きもない彼女の魅力。
この時ばかりは純粋で、素直で、あどけなくて。
無垢な姿に愛おしくなって抱きしめ存在の確認。
小さくて温かくて、・・・守りたい。
抱きしめていたい。
一生・・・。
そんな感情に満ちながら彼女の左手を握って、疲労を癒すように目蓋を下せば恐ろしい程簡単に睡魔に襲われ意識が沈む。
あ・・・雷・・・・・・鳴ってない。
最後に思ったのは、
そんな外の静寂にだった。
なんか・・・・いい匂い。
最初に働くのは嗅覚。
追って耳にかちゃかちゃと陶器のぶつかるような音。
ぼんやりと覚醒する思考でゆっくりと目蓋を開け始めると入り込む光に目が眩む。
一度閉じてまた開いて。
ようやく視界に捉えた部屋はカーテンも開いて朝日を取り込む。
ぼんやりと横に映り込む部屋の景観を見つめ、そこが自宅ではなく彼女のマンションのリビングだと把握。
把握すれば・・・。
弾かれたように起き上がり記憶の回想。
そして生々しく脳裏に浮かんだ昨夜の情事に変に焦って、瞬間隣に不在の彼女に気がついたと同時。
「・・・・おはようございます」
響いた声に振り返れば思ったより至近距離で存在している彼女にビクリと体が跳ねてしまった。
「お、・・・おはよう・・・です」
「ダーリン・・・・」
「・・・・・はい、」
「・・・・・・・・体痛い」
「全力でごめんなさい」
コーヒーカップ片手にソファーの背もたれに腕を組んで顎を乗せ俺を見つめていた彼女の淡々とした非難。
もうこの現状謝るしか術がない。