夫婦ですが何か?
どこか気まずい思いで視線を逸らせばまだ裸の自分に意識が走って、自分の服を探すように顔を動かすと。
「服なら畳んでここに、」
「す、すみません・・・・」
「他になにか要望は?・・・・【私】以外で」
「・・・・コ、コーヒーを・・・、あ、今持ってるの一口でもいいや」
とりあえず自分の平静を取り戻すべくコーヒーを求めて手を伸ばせば、触れるより早く寄った彼女の眉根。
そして、
「あなたと同じカップ使うなんて嫌なんですが・・・」
その一言に一瞬呆気にとられ、でもすぐに思い出したやり取りに困ったように笑ってしまった。
俺の解釈を捉えると彼女の口元も緩やかに弧を描き、スッと差し出されたコーヒーと、追って出されたシナモンスティック。
それを受け取りコーヒーを口に含んでようやく安堵。
「・・・・いい天気だね」
「・・・・・あなたにとっては昨夜の雷雨の方が【都合の】いい天気では?」
「朝から意地悪だなぁ、」
「まぁ、不本意な負け方してますから」
「・・・・後悔してる?」
一瞬僅かな懸念を胸に振り返って問いかけると、背もたれに身を預けてじっと見つめていた彼女がスッと身を乗り出す。
・・・と、
すかさずなキス。
食んで啄んで、遊ぶように重ね合わせてゆっくり離し。
それでも触れるくらい近くで声を響かせた。
「後悔・・・・ではなく、負けず嫌いです」
「フッ・・・悔しかった?」
「それはもう・・・」
「怒ってる?」
「不愉快です。また『出直し』継続にしてやろうかってくらい」
「わぁお、やっと解禁?したのに・・・、ご機嫌直してよ?」
困ったように眉尻下げて微笑むと、ムッとした表情を作り上げて見つめていた彼女が再び軽く唇を重ねる。
でも一瞬、
一瞬の接触。
うん、これは・・・・もっともっと、と後を引いちゃうよ?
そんな感情に素直に彼女の頬に触れて自らも唇を重ねて、さっきみたいに遊ぶようなキスを繰り返し離す。
「・・・でも、・・・恐ろしく快感だったわダーリン」
「ま、毎回は・・・・ああは無理だよ?」
「・・・自分で上げたハードルは責任持って飛び越えてよね?」
「毎日雷でも鳴ればねぇ・・・」
そう言いながら窓の外を見つめれば、輝かしいばかりの日光に苦笑い。
あの千麻ちゃんは可愛いけれど、事後のリスクは恐ろしく高いと追記して記憶を閉じていると、不意に光を遮るように俺の前に移動してきた彼女。