夫婦ですが何か?
今まで私が感じていた床の感触をしっかり体感させ見下ろすと、驚愕で見開いたグリーンアイを覗き込み。
さっき彼がして見せたようにニッと微笑みすかさず唇を重ねた。
食いつくような接触。
不意打ちのキスに驚いた彼がそのままの声を発しようと唇を動かし、それすらも優勢だと躊躇いもなく口内に舌を滑り込ませた。
「っーーーー」
「ーーーーーっはぁ、んーーー」
どういう意味なのか私の腕をつかむ彼の手。
それでも抵抗するには拒絶も力も感じない。
只々焦りと困惑は継続、でも彼もそこは手練れな男。
不意を突かれた驚きが落ち着き始めれば素直にキスに反応して、入り込んでも悪戯に彼の舌には触れず歯列や内壁を刺激していた私の舌先に『焦らすな』とばかりに絡み付いてくる。
でも・・・甘いわねダーリン。
絡み合ったのは一瞬。
その一瞬にたっぷり甘い余韻与えすかさず唇を離すと指先で自分の唇をなぞるように拭って口の端を上げる。
「続きは私をその気にできた時にね」
唖然と私を見上げていた彼の頬を軽くポンポンと指先で叩くと、瞬時に悔しげに眉根を寄せる姿に優越感。
きっとより一層その欲求不満が溜まっていることでしょうね。
それでも知ったことではないと彼の上に乗せていた体を名残惜しさも見せず、顔にかかる長い髪を押さえながらどかしていくとさすがに呑み込めなかったらしい彼の不満。
「千麻ちゃんのその気のツボがまったくわからないし!!」
「・・・・まぁ、元々あなたにそういったものを抱く感情を持ち合わせていませんので・・・」
「っ・・・それ・・・地味に傷つく・・・。しかも・・・・またさりげなく【初】ディープ奪っていかないでよ!!俺立場ないじゃん!!」
「ダーリン・・・、夫婦とは女が強者である方が長続きするのよ」
「・・・・えっ?じゃあ千麻ちゃん立てたら1年契約延長するの?」
「・・・・弱い夫に見切りをつけるのも早いものですから」
「おい・・・・」
結局は同じじゃないかと不愉快を全面に不貞腐れる彼を横目に、すっと立ち上がると再び椅子に足をかける。
取り損ねていた鍋を今度こそ下そうと思っての行動。
片足をかけ、まさに体重移動し床についている足を持ち上げようとした瞬間。
すでに椅子に乗っていた足首に絡み付いた熱。
その瞬間にうんざりし、若干あきれた視線で今度はなんだ?と彼を見下ろせば。
絡んだのは不愉快なグリーン。
まだ今の事に物申したいのかと挑むように見つめ返せば、半ば強引な力で掴んだ私の足を引っ張り下した。