Je te aime ~愛しき人よ永遠に~
ほんの4~5分かかるかかからないか位しか乗っていなかった筈なのに、アテイ君の家の前に着くと、ドッと緊張が解れた。


私は急いでバイクを降りてメットを外した。
『ふぅ。ありがとう。』

そう言ってメットをアテイ君に渡した。
アテイ君は得意気に聞いてきた。

『どうよ。俺のバイクいいっしょッ?』

私は精一杯笑顔で答えた。
『ありがとう。』

それしか言葉が出なかったのだ。
私はアテイ君がバイクをしまうのを待ってアテイ君の後に続いて家にお邪魔した。


初めて男の人の家に行った。
玄関に沢山の靴が転がっている。
『ただいま~!!』アテイ君が声を出すと、奥から返事が来た。
『おかえり~!』中年の女性の声だ。きっとアテイ君の母親の声だ。


私はあわてて少し大きい声で言った。
『お邪魔します!』
同じ声の主が返事をする。
『遠慮しないで入っておいで~。』


私はなんとか自分の靴を置く場所を作り靴を脱いで玄関のすぐ横の部屋にアテイ君に続いて入った。
コタツが部屋の真中にあってベッドがあってテレビが付いていた。
コタツにナーちゃんとアテイ君の母親が何やら話ながら笑ってた。


私はアテイ君の母親に声をかけた。
『初めまして文です。』


アテイ君の母親はニッコリ笑うと手招きして言った。
『ハイハイ。初めまして。座ってくつろいで。』


私はコタツの空いている所に座った。
アテイ君はベッドの上に座って私に向かって言った。

『ようこそ我が家へ。ここはいつ来ても大丈夫だよ。ナーも俺が居なくても来てんだよ。』

私は驚いた。文はその事を知ってるんだろうか?


ナーちゃんを見ると気にも止めていない感じでおばさんと話を続けていた。


こうして私もアテイ君の家に入り浸る日々が始まった。
しかし、アテイ君のバイクに乗ったのは後にも先にもその1回だけだった。


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