嘘を重ねて。


私はそっと母から離れると
タクの元に戻った



「本当に…タクに感謝してもしきれないよ」


「俺は、ユエに笑ってて欲しいだけ」


そう言ってまだ乾いていない涙を
優しく手で拭った


「帰ろう。ユエ」


「うん」



ギュッと手を握る
その手の温もりは本当に心地良くて…

握る力を強めると
タクも優しく握り返してくれた


ーーーーーー家に戻るとタクは言った



「ユエ。今日の夜、BARいこ??」


タクのほうからBARに誘われるのは
久しぶりの事だった

…ここに来た日以来だ


それでも特に気には留めずに
私は“うん”と頷いた


…今思えばおかしな事ばかりだった筈なのに。



夜になり私はタクとBARに来ていた


“ガチャ”


店のドアを開けると
そこには誰もいなかった



「あれ…タク、お客さんは…??」



首を傾げるとタクは


「今日は貸し切り。」


と言って私の手を引いた


いつものカウンターに座らされた私

タクはカウンターの向こうに立つと
カクテルを1つ目の前に置いた


「ユエ。これ新作の試作品」


「飲んでいいの??」


「ダメだったら出さないよ」


クスクス笑うタクにつられて私も笑う
そしてそっとグラスを手に取った


「いただきます」


「どーぞ。」


少し口に含むと予想とは違った味が広がった


「苦い…」


そう。苦かった。
タクの作るカクテルは甘い物が多いのに
…このカクテルは苦かった


「苦いけど何だろこれ…甘い味も微かに、する」


一見、苦いカクテルに感じるけど
私は確かに微かな甘味を感じた


「…さすがユエだね。その通りだよ」



満足気に笑うタクに
私は疑問を投げ掛けた




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