嘘を重ねて。




「お母さんね…結映の事が何よりも大切よ」


「…っ」



その言葉を聞いた時
全身の力が一気に抜けた



「ごめんなさい結映…お母さん、貴方に幸せになってもらいたかった。私のような思いはして欲しくなかった。ただそれだけなのよ…」


母は涙ぐみながら
初めて私に胸の内を明かした


「昔は“お母さん”っていつも着いてくるような明るくて元気な子だったわね…でもいつからか暗くなって、私からも距離を置くようになった。」


「…私はずっと働いてたから。こんなの言い訳にしかならないのでしょうけど、貴方にどう接するべきか分からなかったのよ…」


つまり、母は私の幸せを願った故に
こんな態度をとっていた、という事

その事実を知った今
私の目からは止めどなく涙が溢れてきた



「結映…辛い思いをさせてしまって、ごめんなさいね…ッ」


「お母さん…ッ」


母はギュッと優しく抱き締めた

懐かしい感触
懐かしい香り

こんなに心地の良いものだっただろうか


そんな思いを噛み締めながら
私もそっと、抱き締め返した


「ユエ」


「…っ」


背中に飛んできた声に振り返ると
穏やかに笑うタク

私も微笑み返すと
タクは小さく“良かったな”と呟いた





< 69 / 116 >

この作品をシェア

pagetop