ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
状況は変わらず、長机の上に倒されている最中で、
両手は頭上でホールドされ、抵抗できない。
私の腰を抱えるたくましい左腕に、グッと力がこもり、
体の密着度が増した。
彼の白衣からは、ビール酵母由来の甘いエステルの香りが、ふんわり漂っていた。
整った綺麗な顔が、更に距離を縮めてきて……、
やがて視界が、彼の瞳の色で覆われた。
そうだった!
過ぎた失態を反省している場合じゃなかったのだと、
再び心はパニックに襲われる。
鼓動が限界までスピードを上げ、
心臓が爆発する寸前だった。
喋ることも、目を閉じることも、
息を吸うことさえ出来ずに、
カチンコチンに固まるだけの私。
ゆっくり近付く形の良い唇は、
3cmほどの距離で、ピタリと止まった。
今にもくっつきそうな至近距離で、久遠さんは言う。
「なぜ、無抵抗なんだ。
せめて“やめて”くらい言わないと、止め時が分かんなくて俺が困るだろ。
おい夏美、夏美?
お前……生きてるか?」
死、死にそうです……。