ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
いい人そうな彼を疑ったりしないけど、
言葉を濁して、ごまかした。
“誰にも情報を漏らさない”
久遠さんとの約束を破らないよう、不用意な会話に気をつけないと。
新ビールという言葉を口にしたくないのに、
なぜか彼は、
「気になるから教えてよ」
と、しつこく食い下がる。
「大したことじゃないので……」
頑張ってはぐらかし続けていると、やっと諦めてくれた。
堂浦さんとの出会いのキッカケについては、聞くのを諦めた彼だが……
次に持ち出した話題は、確信犯的な内容だった。
「研究開発部の久遠さん。
あの人、すごいよね。
ここ10年、うちの会社から出る新ビールには、ほとんど全てあの人が関わっているらしいよ」
「そ、そうなんですか。知らなかったです……」