ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「頼む、教えてくれ!
俺のチームの新ビール、今回かなりイイ線いってると思うんだ。
あとはプレゼンで、審査員にどれだけ印象を残せるかに掛かってるんだよ。
最有力候補の情報が手に入れば、
有効な対策が立てられる。
お願いだから教えて下さい!
神様、仏様、田丸様!」
田丸様……?
プライドゼロで、末端社員の私に頼み込んでいる、彼。
土下座真っ最中の彼を見下ろし、
ポカンとしてしまった。
手荒な真似されると思っていたので、拍子抜けもいいところ。
それは良かったことではあるけれど、
悪人になり切れない彼に、どう対応していいのか分からなくなる。
取りあえず、
「土下座はやめて下さい」
と言ってみた。
先輩社員にこんな真似されても、
困るだけ。
すると彼は、床に擦りつけていた額を上げて、私を見上げた。
その目はキラキラして、女神を見つめる信者みたい。
ん?と首を傾げる私に、
彼は勘違いした言葉を言ってくる。
「土下座をやめれば、情報を教えてくれるという意味だよね?
ありがとう!」