ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
どうしても目立ってしまう彼の隣には、ちんまりした私。
頑張ってオシャレしてもこの程度で、ごめんなさいと謝りたくなる。
ふと見ると、会場の奥で、同僚の由香が私に手を振っていた。
そうだ!
私には由香がいる。
この会場内では、同レベルの由香と一緒にいる方がいい。
そう思い、手を振る由香の方に歩き出そうとしたら、
「どこへ行く気だ?」
久遠さんに腕を掴まれ、引き戻された。
「同僚の所へ……」
そう言うと、
「駄目だ」
と言われてしまう。
もう当日だし、情報漏れを心配する必要もないでしょう?
そう言いたかったが、引き止められた理由はそれではなかった。
久遠さんが真顔で言った。
「隣にいろ。
これでも緊張しているんだ。
お前がいると和む」
目を丸くして、瞬時に耳まで真っ赤になる私。
甘い展開を期待させるような台詞が、久遠さんの口から出たのは初めてだった。