ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


一階フロアを走る私に、ホテルの従業員が怪訝そうな目を向けていた。



その人とすれ違ってから、ピタリと足を止めた。



いつまで走っても、フロントや玄関のあるロビーに辿りつかない。



周囲を良く見て、

今立ち止まっている場所は、さっきから何度も通っている場所だと気づいた。



ここは、大ホールの前。


すっかり片付いているけど、数時間前までプレゼン大会が開かれていた場所。



このホテル内での、自分の居場所をやっと理解する。



思いっ切り、出口と逆側に走ってしまった。



しかもこの辺りは回廊になっているから、

無駄にぐるぐる、同じ場所を走ってしまった。




「私、何やってんだろ……」




自分の間抜けさに呆れたお陰で、怒りは幾分抜けた気がした。



フゥーと長い溜息を吐き出してから、正しい出口方向へと踵を返した。



振り向いた瞬間、目の前に人がいて、驚き体をビクつかせた。



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