ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
精一杯の抵抗を見せると、チッと舌打ちが返ってきた。
腕を掴んでいた彼の手が外れたと思ったら、
今度は素早くウエストに回された。
急に視界が傾いた。
軽々と持ち上げられて、キャアと叫んだ時には、
私の体は彼の肩の上にあった。
くの字に折れ曲がった姿勢で、
引き締まったヒップラインを見下ろすというおかしな状況。
私を担いで久遠さんが向かったのは、大ホール横にある“Private”と書かれたドア。
従業員しか開けることの許されないそのドアを勝手に開けて、
久遠さんは中に入ってしまった。
カチッと音がして、真っ暗な空間に電気が灯る。
ホールの天井に輝くシャンデリアと違い、
この小部屋の天井は、小さな裸電球一つのみで薄暗い。
部屋というより、物置だった。
布張りのホテル椅子。
それを高く積んだ塔が幾つもある。
大小、丸テーブルの天板が、壁に整然と何十枚も立て掛けられていた。