ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


由香は勝手に甘い妄想していたみたいだけど、

そんなものは、ない。



それでも、同居生活が続いているというだけで、私は現状に満足している。



平穏で楽しい二人暮らし。


幸せの形は人それぞれなのだから、ケチをつけないで欲しい。



ムッとして由香に背を向け、トイレから出ようとする。



ドアの取っ手に手をかけたところで、由香が脅すようなことを言ってきた。




「そんなヌルイ恋愛していると、
他の女子社員に盗られちゃうよ?」




盗られる……?

その言葉がピンとこなかった。



久遠さんはイケメンだけど、社内での位置付けは、

『変人揃いの研究開発部の一員』

そんなところ。



現に狙っているような女子社員を見たことがないし、

盗られると言われても、そもそも私の物ではないし。



由香の脅しは、非現実的。

そう高を括る私に、由香は忠告する。




「のん気にしていられるのは、今のうちだよ?


いい? 彼は高身長、高学歴の輸入モノ。天才でルックスは最上級。

それで高収入ともなれば、多少中身に問題があっても、女は寄ってくるんだよ!


今までは社内でレアキャラ的存在だったけど、

今回のプレゼン大会で注目度がアップしてるし、

若い女子社員達に、ぜーったい狙われてるから!」




< 231 / 453 >

この作品をシェア

pagetop