ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
由香は勝手に甘い妄想していたみたいだけど、
そんなものは、ない。
それでも、同居生活が続いているというだけで、私は現状に満足している。
平穏で楽しい二人暮らし。
幸せの形は人それぞれなのだから、ケチをつけないで欲しい。
ムッとして由香に背を向け、トイレから出ようとする。
ドアの取っ手に手をかけたところで、由香が脅すようなことを言ってきた。
「そんなヌルイ恋愛していると、
他の女子社員に盗られちゃうよ?」
盗られる……?
その言葉がピンとこなかった。
久遠さんはイケメンだけど、社内での位置付けは、
『変人揃いの研究開発部の一員』
そんなところ。
現に狙っているような女子社員を見たことがないし、
盗られると言われても、そもそも私の物ではないし。
由香の脅しは、非現実的。
そう高を括る私に、由香は忠告する。
「のん気にしていられるのは、今のうちだよ?
いい? 彼は高身長、高学歴の輸入モノ。天才でルックスは最上級。
それで高収入ともなれば、多少中身に問題があっても、女は寄ってくるんだよ!
今までは社内でレアキャラ的存在だったけど、
今回のプレゼン大会で注目度がアップしてるし、
若い女子社員達に、ぜーったい狙われてるから!」