ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
堂浦さんは私を見て、微笑んでいた。
その笑みはいつものチャラ男スマイルではなく、
小馬鹿にしたような笑い方。
鼻でフッと笑ってから、彼は頬杖ついて言った。
「新たな恋か……
本当にできると思ってんの?
久遠の家から、出ることも出来ないのに?」
顔がカッと熱くなる。
さっき謝ったことを後悔した。
堂浦さんのせいで、すき焼き定食を食べる気分じゃなくなり、
半分残したトレーを手に立ち上がった。
歩きだした私の背中に、堂浦さんの呆れの言葉が浴びせられた。
「久遠に惚れてる自覚は強いみたいなのに、
夏美ちゃんは、何で方向間違えちゃうのかなー……」
「そうなんですよ。
あの子、恋愛するのが下手くそで」
堂浦さんに同調する、由香の声も聞こえた。
二人して、好きに悪口言えばいい。
私は新たな恋を見つけると決めたんだ。
ポリシーに反しない、結婚前提で付き合える人を早く見つけて、
溢れそうな久遠さんへの恋心を、きっと消してみせるから。