ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


相談員を間に挟んでの自己紹介が済んだ後は、

予定通り、ふたりで食事に行くことになる。



相談員の女性は「行ってらっしゃいませ」と私達ふたりに向けて言ってから、

私だけに耳打ちした。




「これ以上の良縁はございませんよ?

頑張って下さいね」




最上の良縁と言われても、浮かれる気持ちは一切湧かず、

そうなのだろうと冷静に思うだけだった。



相談員に強調されたのは、由香も食いついた“T大卒の官僚"という肩書きだった。



人生の勝ち組で、エリート中のエリートだ。



私ごときがそんな人と知り合える機会は滅多にないだろうし、

まして結婚前提のお付き合いが始まるチャンスなんて、これを逃したら二度と訪れないだろう。



頭では分かっている。

これは幸運なのだと。


それでも気持ちは、中々追いついてくれない。



目の前の片岡さんの中に、どこか久遠さんに似ている部分はないかと、無意識に探してしまうのだ。



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