ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
急に真顔になる彼。
でもそれは一瞬のことで、口元はすぐに笑みを形作る。
「本当に飼育していますよ。
なぜですか?」
「だって、ハムスターはドングリを食べないし……」
「ああ、それですか。
嫌だな、ドングリと言ったのは冗談ですよ。
笑ってもらいたくて言ったのに、
本気に取られては困ります。
僕は君に、このデートを楽しんでもらいたいと思っています。
この気持ちが伝わりませんか?
せっかく高級フランス料理をご馳走しているのですから、笑顔でいて下さい」
目の前にメイン料理が運ばれて、
会話は中断した。
黒服のウェイターに、長い料理名を告げられる。
「和牛肉のステーキとフォアグラのロッシーニ、黒トリュフソース掛けにございます」
美味しそうと感じるより先に、
高そうという言葉が頭に浮かんできた。
片岡さんはメイン料理に合う赤ワインも追加注文してくれた。
白い歯を見せ微笑む彼に、
「どうぞ遠慮せず召し上がって下さい」
と言われた。