ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
布団を掛けられて何も見えなくなり、耳をそばだてる。
話し声と物音に神経を集中させた。
彼はまずドアの覗き窓から、廊下の様子と人物を確認したみたい。
「近すぎて、顔しか見えない……
ハゲたオッサンだな。
従業員か……?」
そんな独り言を呟いていた。
止まらないチャイムの連打に、
彼が声を荒げた。
「真夜中にうるせーな!
何の用だよ?」
ドアを開けた音はしないので、
閉めたままの会話のようだ。
それに答えるのは、ドアの向こうの中年ホテルマン。
「お客様、あにょ〜、
変な物音がすると、フロントに苦情が入りましてにょ〜。
何かあったのかと思いましてにょ〜」
真っ暗闇の布団の中で、ハッとして聞き耳を立てていた。
「にょ〜にょ〜」と語尾が変な喋り方をする人物は、一人しか知らない。
久遠さんの一応上司。
研究開発部の部長、にょにょ村(野々村)さんだ。
なぜ、にょにょ村部長がここに?
そう考えて、人違いかもという結論に達した。
にょにょ村部長がここにいる理由はないし、ホテルマンでもない。
語尾が「にょ」の人物は、私が知らないだけで意外と多いのかも知れない。