ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
ソファーに座る久遠さんの真後ろで、口を開きかけた。
私が呼びかけるより先に、気配に気づかれてしまった。
彼はソファーの背もたれに肘をかけ、肩越しに振り向いて私を見る。
「どうした?」と聞かれて、アタフタしてしまった。
「あ、あの、あのっ……」
聞きたい気持ちは十分強いのに、中々言い出せない。
あのあの言いながら、前に出たり下がったり、
半径1mの円内をウロウロしてしまう。
明らかに挙動不審な私を見て、久遠さんはこう聞いた。
「それ、歓迎会の余興ダンスか?
リズム感が激しく欠如しているな」
ダンスじゃないわ!と心でツッコミを入れて、若干凹んだ。
確かに新入社員歓迎会のシーズンではある。
庶務課の女子6人でやる余興は、
ダンスじゃなく二人羽織りにする予定で……と、
そんな話、今はどうでもよかった。
踊っていると思われないよう地に足をしっかりつけ、
意を決して口を開く。