ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「久遠さんにお話があります!」
「なんだ?」
彼はさっきよりも体を捻り、
視界に私をしっかり入れた。
切れ長の美しい瞳に見つめられるとドキドキ心拍が加速して、緊張が増してしまった。
女は度胸!と自分に言い聞かせ、
ついに本題を口にする。
「あの、私をアイ……アイ……ア……」
“愛していますか?"
たったこれだけの台詞がうまく出てこない。
ハンサムフェイスの眉間にシワが寄る。
不審者を見るような視線を向けられ、焦りが生まれた。
「アイ……あ、えっと、その……ドライアイ。
そうそう私、ドライアイに悩んでいるんです!」
言えなくて、ついごまかしてしまった。
アイの付く単語をと考え、咄嗟に出てきた言葉がドライアイ。
すると久遠さんはズボンの後ろポケットから財布を取り出し、
二千円を私にくれた。
「目薬、買ってこい」
もっともな解決策を与えてくれた久遠さんは、
視線を私から、テレビのサッカー中継に戻してしまった。