ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
数十分経ち、真っ赤な夕日がマンション群の谷間に落ちる頃、
揺れるブランコが急に止められた。
体が惰性で前に飛び出しそうになり、焦って鎖を握る手に力を込めた。
落ちずに済んでホッとする私の真後ろに、
「夏美」
と、久遠さんの声がした。
長い腕が体に回され、背中を抱きしめられた。
久遠さんの頭が肩に乗り、彼の髪が私の頬をくすぐる。
「久遠さん……。
お話、終わったんですか?」
「ああ、10分前にな。
捜したぞ。なぜ電話に出ない?」
「あ……」
ポケットに手を入れ、スマホに触れる。
そういえば……昨日は堂浦さんがしつこくメールしてくるから、
煩くてマナーモードにしていたんだ。
マナーモードを解除し忘れていたことに、今気づいた。
それを伝えて、「あはは〜」と笑ってごまかすと、
「怒らせたかと思っただろ。
焦らすな……」
久遠さんの安堵の吐息が、首筋にかかった。