ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
川原田さんのご夫婦は、気さくでいい人達だと思う。
いつもニコニコして、私を楽しませようとしてくれる。
何もなければ、私ももっと心を開きたいところだけど、
嫁候補に上げられているようなので、おいそれと打ち解けるわけにいかず、困るだけだ。
「あの、ホップの生育状況を見せていただきたいのですが……」
呼び出されたのはそんな用件だから、それを済まさない内には社に戻れない。
私のその言葉を待っていたかのように、倉庫の陰から姿を現したのは、
川原田家のご長男。
息子さんの登場に、お父さんが手招きする。
「おっ、耕平、ちょうどいい所に来た!
夏美ちゃんにホップ見てもらいてぇから、今呼んだとこだ。
お前が畑さ案内せぇ。
ワシらはあっちの畑に行っでっからな」
いつもは三人揃って出迎えてくれるのに、今日はなぜご夫婦二人だけなのかと思っていたけど、
そういうシナリオが作ってあったみたい。
ワンパターンだと、私が面白くないと思ったのかな?
何だろう……。
私に落ち度はないはずなのに、気を遣わせて申し訳ないという、おかしな気分になる。