ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


川原田家の長男、耕平さんが私の前に立つ。


英語のロゴが入ったキャップを被り、作業着姿。


彼は私の7つ年上の、35歳。



いつものことながら、日焼けした頬を赤らめ、緊張した面持ちで私に言った。




「な、夏美さん、あっちの畑から順に回って……。

結構、歩かせてしまうけど……。

あ!歩くの嫌だったら、俺がおんぶすっから……」



「いえ、歩くのは嫌じゃありませんので。

とにかく畑に行きましょう」




耕平さんがホップ畑の中を進んで行き、私はその後ろに続く。



チラリ振り返ると、川原田さんご夫婦が、私達に熱い視線を向けていた。



「耕平、頑張れ!」という応援が、聞こえてきそう。



期待させてしまうのが……辛い……。



嫁に来ないか?と言葉に出してくれたら、ハッキリお断りできるのに、

いつもこんな風に呼び出されるばっかりで。



向こうが核心に触れてこない以上、断ることが出来ない。


どうすれば、いいのか……。



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