ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
びっくりして振り返ると、
後ろのもう一つのデスクで、
何かが動いていた。
山と積またファイルとデスクトップのパソコンの向こうに、
薄毛の頭頂部だけが、微かに見えていた。
「久遠く〜ん、ちょっとコレ、教えてくれんかにょ?
解析結果がおかしいんだにょ」
薄毛の頭がそう言って、久遠さんを呼び寄せた。
久遠さんはPC画面をチラリと見て、
渋い顔して薄毛に言う。
「おい部長、計算式が違うだろ。
さっきも教えたのに、同じ間違いすんなよ」
「すまんにょ〜。
久遠くんがいないと、何もできない部長ですまんにょ〜。
定年退職まで、よろしくにょ〜」
「ったく……」
部長!?
私は慌てて、立ち上がった。
この部屋に入って、デスクが二つあると気付いていたが、
二つとも久遠さんのものだと思っていた。
彼が“俺の部屋”なんて言うから。