ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
ドアノブが回り、扉が静かに内側に開いた。
その人の姿が視界に入った途端、
私は驚き、目を見開いた。
「嘘……」
そう呟いた後は、何も言葉がでてこない。
モデル並のスタイルに、非の打ち所のない端正な顔。
白衣を身に纏い、優雅な足取りで入ってきた彼は、社長の隣に立った。
ザワザワしている従業員達の中に、工場勤務の女の子の、キャアキャアとはしゃぐ黄色い声も混じっていた。
隣で吉本さんが私に耳打ちする。
「俳優さんみたいな人ね。
見た目は素敵だけど、惚れちゃダメだよ?
夏美ちゃんには、川原田さんの息子さんが……」
吉本さんの言葉は聞こえているけど、頭に入らなかった。
だって、目の前にいるのは、
会いたくて堪らなかった、久遠さんだから……。
心臓が壊れそうなスピードで、拍動していた。
驚きの波は、中々去りそうにない。
驚きと同時に湧き上がるのは、喜びよりも焦りの感情。