ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
若くて美男子、頭が切れて、天才化学者……。
それって……
もしや、久遠さん……?
そう思ってしまう私は、重症かもしれない。
すぐに首を横に振り、その考えを否定する。
アメリカで難しい研究に没頭しているはずの久遠さんが、
何で田舎のちっぽけな地ビールの会社に、来ると言うのだ。
私のバカ……。
可能性ゼロであると分かっていながら、久遠さんを思い浮かべるなんて。
心が痛むだけなのに……。
会社の存続に喜ぶ従業員達は、新社長についても期待を寄せる。
一代でカントリー麦酒をここまで育てた現社長が、惚れ込んだ男。
若くてイケメンで、天才化学者とは、一体誰なのか?
「入ってくれ」と、社長がドアに向けて声をかけた。
私も吉本さんも、他の従業員達も、一斉にドアに注目した。