ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
久遠さんは長い足を組み、指先でペンをクルリと回し、
ニヤリと笑って私を見ている。
「夏美……」
彼が何かを言おうと、口を開いたその時、
ドアの外にガタガタと物音を聞いた。
「しー!見付かっちゃうでしょ!」
誰かが誰かに注意する、小声にならないヒソヒソ声も聞こえた。
まさか!?と慌てる私は、走ってドアまで行き、勢いよく開けた。
社長室にドドドとなだれ込んできたのは、見慣れた面々。
吉本さんに、千花ちゃん。
駒野事務長に、副工場長の出来内さん、それから……。
総勢10名の団体様が、仕事をさぼって聞き耳立てていたと知り、
驚いた後は、郵便ポストより顔が赤くなった。
「な、何やってんですかーっ!!」
慌てて廊下を駆け出し、逃げて行く不届き者達。
チェック済みの書類を振り回して、追いかけようとしたら、
楽しそうな笑い声と優しい声が、私の背中に投げかけられた。
「夏美、帰ったら一緒にビール飲もうな?」
走り出した足を止め、社長室を振り向いた。
愛しい旦那様に「はい!」と笑顔で答えた後は、
心に秋晴れの青空が広がった。
怒りっぽい私のことだから、この先もケンカすることがあるだろう。
それでも、いい。
それが、いい。
ケンカの後の仲直りのビールは、
きっと格別に美味しいと思うから。
【終わり】
After storyまで読んで下さった皆さま、本当にありがとうございます。
この物語は、これで終わりにしたいと思います。
たくさんの応援、心より感謝申し上げます。
新作を公開した時には、ファンメールにてお知らせさせていただきます。
m(__)m


