ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
“一緒にいてくれ”というのは、
“見張らせてくれ”という意味だ。
悪かったと謝りながらも、これからも監視すると宣言されたようなものだった。
私を信じたいと思う一方で、過去のトラウマに縛られて、
やっぱり信用できないみたい。
なんて心が不自由な人なのだろうと、哀れに思った。
恋人に裏切られた衝撃は、この先いつになったら、彼の心から消えるのか……
久遠さんは、寝相を横向きに変えた。
私の太ももの上に、深いため息がこぼれ落ちた。
無意識に、彼の頭を撫でてしまう。
すると、その手を掴まれた。
久遠さんは長い睫毛を伏せ、
私の手を握ったままこう言った。
「夏美、少し眠りたい。
10分経ったら起こしてくれ」
「……はい」