ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
久遠さんの話は化学の専門用語が多くて、全てを理解することはできなかった。
それでも彼が、私を信用してくれない理由がわかった。
前の職場で彼は、心血注いだ研究成果を、信頼していた同僚に盗まれていた。
それだけではなく、用意周到に仕組まれた罠にはまり、
気づけば、その研究自体から外されていたそうだ。
久遠さんを裏切り陥れた同僚は、
女性で、
彼の恋人だった人……
昔に思いを馳せて、久遠さんは長い息を吐き出した。
そして、こう付け加えた。
「頭では分かっているんだ……
女だから信用しないという考え方は、ナンセンスだということが。
悪いと思っている。お前を必要以上に疑ってしまった。
だが……不安は消えない。
頼む。もう少しだけ。次のプレゼンまで、一緒にいてくれ……」