アタシのスプーン
良く寝たぁ~
アタシは、普段から、とにかく、よく寝る。
まっ、家で寝る分は、ダンナちゃんと息子2人の御飯のおかずが一品少ない程度の実害。アタシには、なんの影響もない。

最近、入院手術を経験した。

アタシは、看護師免許を持っている。
パートに行かして貰っている病院で、人生初の全身麻酔による、お腹の手術を経験した。

病室は、無料の4人部屋。たまたま、窓側のベッド。四角いお部屋で、洗面台とトイレ付き。四隅にベッドがある。お互いが足を向ける形で、ベッドが2列に配置。
同じ年代の似たような病気。
ちょっと、元気になった術後の夕食後、話は始まった。
「手術室の台の上で、目が醒めたよねぇ。」
アタシ以外の喋った人を含めて、3人が頷く。
「起きたら、管が口から出てたでしょ。それを抜かれる時、気持ち悪かったよねぇ。ズルズルって。」
また、アタシ以外は、頷く。
「手術した部屋から出て、寝たままローラーに乗れって言われて、自分のベッドに横滑りに乗せられて、パジャマに着替えて、エレベーターに乗せられ看護詰所の横の部屋に連れて行かれたよねぇ。」
リアルな回想に
「そぉそぉ。」
と、声のそろった相槌が打たれた。
3人の内の1人が、アタシが頷きもせず、フリーズしていることに気が付き、チラッと見た。
全く知らない話なら、適当に相槌を打ったと思う。
しかし、アタシはパートとはいえ、この病院の看護師だ。
まずい…今の話は、どう思い返しても記憶がない。
よほど、上手く麻酔がかかったとしても、意識朦朧レベルでなく、普通に寝ていたと思われた。
クニャクニャな上、メタボで重いアタシ。
手術が終わったのは、午後5時過ぎと聞いている。
手術室勤務者は、基本が日勤。
帰る間際に、デカい私の移動に着替え。
疲れた身体に、追討ちをかけてしまった。
多分、気を遣って、優しく声もかけてくれただろう。
アタシが、目覚めたのは、看護師詰所横の回復室。
「起きとんかぁ」
ダンナちゃんが、両方の上下の瞼を手荒く開眼してくれた。
寝てたくせに、いつも通り「起きとうよ。」
小さく意地っ張り。
思えば入院、二ヶ月前にアタシは、手術室へ出入りする眼科外来から内科外来へ異動した。
手術室のヒトには、会わないから、まっいいかぁ~。アタシは、アタマを切り替えて、頷きの輪に入った。
< 2 / 3 >

この作品をシェア

pagetop