意地悪彼氏の攻略法。
奏多がダウンのポケットから取り出した小さな箱。
「右手出して」
何だろうと思いながら、右手を出すと、箱から小さなピンク色のケースを取り出して、その中に収まっていた指輪を差し出した右手の小指にはめてくれる。
「これ……っ」
「ピッタリだな。お前に似合うと思って。
環菜、いっぱい待たせてごめんな。オレは言葉が足りなくて、わかりづらいことも多かったと思うけど、これからはちゃんとお前に伝えるから。
環菜が好きだ。今日から改めて、オレの彼女になってくれますか?」
1年前の今日は、この場所であたしが奏多に告白した。
そして、1年後の今日……再びこの場所で奏多があたしに告白してくれる。
振るなんてバカなこと考えてたあたしに、奏多はこんなことをずっと考えて1年過ごしてくれてたなんて。
「お、お願いします……!」
泣きながらコクコクと頷くあたし。
これで、本当に奏多の彼女になれたんだよね。
泣きじゃくるあたしを笑いながら抱きしめてくれる奏多の腕の中は温かくて、ちゃんと心が通じ合うってこんなに幸せなことなんだと、初めて知った。