君の世界


夏休みに入って一週間が過ぎた。

傷は既に完治しているのに退院許可どころか外出許可さえいつまでも出ない。

真中と話しをつけなきゃいけないのに…


トントンッ

遠慮がちなノックは幸雄のものだ。


僕が入院して兄貴や僕の言動で全てを理解した幸雄

頭は悪いくせにそういう所の勘はするどいのかって言うと泣きそうな顔をしてた。


「直人…いる?」

退屈しのぎに本を読むのが日課になっていたが、そろそろ読む本もなくなってきた。

「これ頼まれてた本」

この間 六法全書を二回目 読みながら

「なんでもいいから日本語じゃない本を買ってきてよ(泣)」

って頼んでから幸雄の本のチョイスはなかなかセンスがある。


選ぶ基準が『なるべく自分に理解出来なくて読みたくない本』なのだから笑える。

「幸雄ありがと」


幸雄がいなくなって響が来るまで何時も一時間くらいある。


その時間に抜けて真中に会いに行こうと思っていた。


あれから毎日 真中からの着信がある。


入院してるのと、出る気がないのとで放置してはいるが…


会わなきゃ話しが進まないから…

コホッコホッ…入院してから時々 胸が苦しくなる。


呼吸がしにくい事は今までなかったのに…


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