倦怠期です!
・・・初めてって言った方がいいのかな。
でも、こんなふるまいしてる私を見ている有澤さんには、分かってるよね。

「気持ちいい?」
「え。あ・・う、ん」

「気持ちいい」というより「もどかしい」みたいな・・・。
この感覚が「気持ちいい」のかどうなのかすら、私にはよく分からない。
とにかく、部屋が薄暗くて良かった。
私の素っ裸なんて、恥ずかしくて誰にも見せられない!
特に有澤さんには見てほしくないよ・・・。

事が進んでいる間、私はずーっと目をつぶったままだったけど、挿入されたとき、思わず目を開けてしまった。

「い、いたっ!!!」

慌てて口を両手で押さえたけど、すぐ上にいる有澤さんにはお見通しというか・・・中まで入ってるから、余計分かる・・・?

「えっ?おま・・・まさか、初めて?」
「な・・・そんなの・・・当たり前じゃない!ブスで愛想も可愛げもない私なんか、誰も好きになったり、ましてつき合いたいなんて思わな・・・え?あの、ちょっと」

動きを止めていた有澤さんが、そのまま急に私をギューッと抱きしめた。

「香世子、初めてなんだ」
「だから何よ。何度も言わないでよ。しかも嬉しそうな声で」
「俺・・・好きだよ」
「・・・はぁ?」
「おまえの切れ長の目も、すっと高い鼻も、薄すぎず厚すぎない唇も、ちょっとしゃくれ気味の顎も、短かった髪も、長くなった髪も俺はきれいだと思うし、全部好きだ」

有澤さんは私の顔の部分と髪を人さし指で軽くなぞりながら、優しい声でそう言った。

「愛想がないっつーか、ツンケンしてる部分はあるな」
「だっ・・・もう!」
「でもそのおかげで、おまえは誰ともつき合ったことないんだよなー」と言ってる有澤さんの声は、ホントに嬉しそうで。

私の目からホロリと涙がこぼれた。

「おまえは可愛いし、可愛げも十分ある。もう少し俺を頼ったり甘えてもええくらいや」
「うっ、うぅ・・・」
「これからは俺が教えてやる。いろいろな」
「う・・・じん・・・」

私の耳に聞こえてくるのは、雨が降ってる音。
有澤さんが動くたびにベッドがきしむ音。
そして有澤さんの荒い息遣い。

有澤さんに「香世子」と呼ばれるたびに、私は「ジン」と答えて、上にいる彼にしがみつく。
そうして私は、初めて有澤さんと結ばれた。


< 52 / 96 >

この作品をシェア

pagetop