full of love~わが君の声、君の影~
引っ越ししてきたばかりで
荷造りから荷ほどきまで他人任せだったから
掃除機を探すのに手間取り
片づけに手間取り
風呂場を掃除すべきか悩んだりで
ほとんどロクなこともできずに
あっという間にチャイムが鳴る。
1Fのエントランスのロックを開け
俺は玄関で待つ。
昔実家で飼っていた飼い犬を思い出す;
緊張してる。
またチャイムが鳴ってすぐドアを開ける。
「早っ!ビックリした~!こんにちは♪お邪魔します」
ニッコリと彼女が笑う。
良かった・・怒っているかと・・;
化粧もし直して着替えもしてきてくれて
さっきよりもよそゆきの彼女に
余計に緊張させられる;
「はい!これ!」
彼女は右手に持っていたスーパーの袋を突き出した。
勢いに押され受け取ると
「重っ」
中をのぞくとビールにワインに焼酎まである。
「酒?」
「おつまみもあるよ~お邪魔しま~す」
と俺の横をすり抜けて部屋にずんずん入っていく。
彼女はリビングに「よいしょ」と袋を置くと
「駅から近くて助かった~前の所はちょっと遠かったもんねえ」
彼女とどうなるかなんて見当もつかなかったのに
俺は彼女が来やすいように最寄駅から徒歩5分圏内を選んだ。
いやらしいなあ~俺;
まさかこんなに早く実現するとは思っていなかったよ。