full of love~わが君の声、君の影~
スピンオフ① 高木聡介の声

今、俺はある男と対峙している。
職場の近くのホテルのカフェテリア
以前、仕事で担当していたアーティストのうちの一人
うちの会社でもVIP待遇のミュージシャンである。
担当とはいえ直接会うのは部下の役目。だから今回で数回目。

会社の人間に見られたら何か仕事上のトラブルでもあったのかと誤解されかねない状況だ
だが今回の話の内容は元妻のことだった
しかもその元妻と結婚するという
彼が『話をしたい』と言っていると彼女から連絡があった

「ご無沙汰しています」
「ああ・・きょうこ・・彼女からは聞いているよ・・まさか相手が君だったとはね・・」
「は、はい」
「たばこ吸っていいかな?」
「は、はいどうぞ」
カチッ。沈黙の中ライターの音が響く。
目の前のこんな13も年下の男相手に少し緊張している自分に腹が立つ。

「どうして彼女なんだ?」
1番聞きたい疑問だった。
初めてこの話を聞いた時、からかわれているのかと思った。
正直今日この場に来てこの男に会うまで信じられなかった。
いや、会っても尚信じられない。

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