full of love~わが君の声、君の影~

頭を思いっきり殴られた気がした。
やはりこの子は確実に彼女の血を、生き方をひいているのだと
最初からこの子には苗字が変わるうんぬんなど関係なかった。

“高木”の苗字にこだわりもなかった。
そこに俺はいなかった。


今日は打ちのめされっぱなしだ。
そうだもうひとつ聞いておきたいことがあった。
今聞くにはダメージが大きすぎる気がしたが
もうなんでもこいという自棄(やけ)にも似た状態だった。

「つきあってる人とかいないのか」
これも父親としては勇気のいる質問だ。
「聞きたいことひとつって言わなかった?」
「ああそうか・・すまん」
親の上げ足をとるようになったのか;

「今はいないけど・・好きな人ならいるよ」
「!」
聞き捨てならない。

「どんな奴だ!」
「んーそうだなぁ・・ちょっとお父さんに雰囲気似てるかも」
何?俺に似てるだって!?
妻にも娘にも見限られたのにか?
「だ、だめだ!そんな奴!ロクな奴じゃないぞ!やめておけ!」
「なにそれお父さん、あははは」
必死に全否定しながら俺は「似ている」と言われて内心めちゃくちゃ嬉しかった。

そういえば娘の笑った顔を久しぶりに見た気がした。

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