full of love~わが君の声、君の影~
「咲・・ひとつ聞いていいか?」
「ん?何?」
こういう時に軽く目を開き好奇心いっぱいにこちらを見る顔もよく似ている。
「お父さんとお母さんが離婚することになった時に・・何故お母さんの籍に入らなかったんだ?」
離婚が決まった時、咲はまだ18歳だった。
残りほんの2年間とはいえ親権をどちらかに決めなければならなかった。
18歳となればもう大人だ。
本人に決めさせた。
当然彼女を選ぶと思っていたが親権は俺に、籍もそのまま高木姓だ。
「・・言わないとダメ?」
「いや、言いたくなければいいよ」
正直最初は聞こうか迷った。
でも聞かなければいけない気がした。
少し考え込んでからゆっくり咲が話しだす。
「・・お母さんが今更苗字が変わるのも面倒だし・・女の子はまたどうせ苗字変わるだろうからって言ったのもあったけど・・」
(ああそれは俺も聞いた)
「でもそう言われる前からそうしようと決めていたよ私」
「?どういうことだ?」
「私知っていたから。お母さんがはる・・あの人のこと好きだって知ってたから。だから邪魔したくなかったの。その方が再婚しやすいかなって」