full of love~わが君の声、君の影~
沢山のフラッシュ 沢山のカメラ
無造作に突き出される沢山のマイク
そしてやはり無造作に投げつけられてくる沢山の言葉
こんなこと初めてじゃない
慣れているはずなのに
俺は改めて自分のいる世界の異様さにたじろいだ
何も言葉を発しない俺に業を煮やしたのか
スタッフが「静かにしてください!」と声を張り上げる
一瞬のうちに場が静まり返る
TVでおなじみの芸能レポーターが先頭切って俺にマイクを向ける
「噂の方のコト教えていただけますか?」
やっと我に返った俺は
ついさっきまで覚えていた原稿を頭に思い浮かべ
話しだす
完ぺきに入れたはずなのにカミカミだ
緊張していると思われレポーターたちが笑う
「そうですか!それはおめでとうございます!
では彼女の好きな所はどこですか?結婚の決め手は?」
「好きな所は・・」
って誰のコト?
さっき俺がしゃべった原稿の人はいったい誰だ
俺が好きな彼女は・・・
また押し黙ってしまった俺にリポーターたちがざわつく
「あの・・晴喜さん・・?」
俺はそのレポーターのマイクを奪い取ると
頭をさげて言った
「スミマセン!」