full of love~わが君の声、君の影~

今日子さんは結局実家とは和解できないまま

俺の軌跡めぐりが2人きりでの最初で最後のデートになってしまった

『さくらの“今”と一緒にいられるのはそれこそ“今”しかないんだからね!』
たまにはさくらを実家に預けて2人で出かけようと提案するとそう今日子さんは言った

『大丈夫!シワシワのヨレヨレになっても手つないであげるから♪』

(うそつき・・)



実家と絶縁状態で友人たちとも離れて
外へ出れば指をさされ何かをささやかれ
仕事場やさくらの通う保育園でも興味本位の目で見られる

それから5年経ち
少しずつ周りの興味が薄れやっと落ち着いてきたところなのに

俺はHalcを辞めてもいいと思った
神島ならきっと反対などしない
表に出なくても音楽に関われる仕事ならいくらでもある

とっくに俺の中の1番大事なものはかわっていた
だけど今日子さんがそれを許してはくれなかった
『私が1番のファンだって言ったでしょ!ステージの晴喜くんが観れなくなるなんてイヤだからね!』


(本当にそれで今日子さんは幸せだったのだろうか・・?)


急に足元がぐらつく

でも
俺の前の彼女はいつも優しく微笑んでいて幸せそうに見えた

だから
俺も幸せでいられた


そうだったはず・・


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