full of love~わが君の声、君の影~
「何で最後まで話させてくれなかったんです!?ちゃんと話させてくれれば・・」
「ちゃんと話せば彼女が批判されなかったとでも?」
「!」
「あなたはもう少し自分の立場がわかってる子かと思ってたわ・・」
チーフはたばこの煙を俺に向かって吐きだす
「この仕事はイメージが大事なの!わかってるでしょ!スポンサーさんたちカンカンよ!」
「今まで誰とつきあっても文句なんか言われなかったじゃないっすか!」
「今度は今までとは違う」
ピシャリとしかし冷静に言う
「昭和生まれのおえらいさんたちには“不倫”と言葉がついただけでOUTなのよ・・たとえそれが間違ってたとしても」
「たとえじゃない!本当に違うんです!」
確かに見た目は華やかで時代の最先端をいっているかのように見えるこの世界だが
その実ウラではまだ古い考えがはびこる
当時は今より尚濃い
俺自身はアーティスト気取りだったが、世間のイメージはアイドル。
それでも今まではたまに女性とのことが取り沙汰されても、ちょい悪でちょい軽くらいがイイとウケていた。
だが
“結婚”とか“パパ”とかは俺のイメージではなかったわけだ。
しかも“歳上妻”とか“不倫”とかも【Halcの晴喜】という商品には必要ないし、求められてもいないのだった。
これで大事なスポンサーだった個人で出ていたCMをすべてを失い
レコード会社の移籍を余儀なくされた
結果、この報道で彼女との実家との道は完全に閉ざされてしまった
(俺のせいだ・・)