full of love~わが君の声、君の影~

それから俺たちは一晩中話した
すぐに幽霊になれたわけではなく気がついたら知らない所にいたうえに
体がふわふわして思い通りに動けなかったこと
ようやく我が家にたどり着いた時には自分が死んでから1年以上経っていたこと

『さくらが泣いていても何もできなくて辛かった・・晴喜くんにもね・・』
触ったりできるようになったのはそれからずっと後らしい
『っていうか男のクセに泣き過ぎ』
「そ、そうかあ・・?」
見られてるなんて知らねえし
『そうそう!久しぶりに我が家にたどり着けて、その後咲のアパートに行ったらいないんだもん!ビックリしちゃった』
ああそうか。その頃にはあの2人同棲はじめてたもんな・・

『いつの間に2人はああなったの?神くんから告白したらしいじゃない!?なんて言ったんだろう・・聞きたかったあ。ねえ聞いてない?』
「そうなんだよ~俺も知りたくて何度も聞いたんだけどさあ・・2人とも絶対口割らないの」
『今なら聞き放題なんだけどね~♪』
「おお!咲ちゃんちにもおじゃましてるわけ?神の奴咲ちゃんに愛ささやいちゃってるの?赤ちゃん言葉とか?」
『さすがにそこまではないけど・・うーんそれでも私の口からはとてもとても~♪』
「何だよ!教えろよ~!」
ついつい声が大きくなってしまった

コンコン!

やべっ!巡回の看護師だ
今日子さんの声は聞こえないはずだから完全に俺の独り言

「田中さん!もう1時ですよ!病院の朝は早いですからもう寝てくださいっ」
電話してると思ったらしい
「スミマセン;」
頭をさげる俺に横で今日子さんがクスクス笑ってる
『言われた通り寝たら?』
ひそひそ声に戻す
「寝てられるかっ」

そうだよ寝ていられるか?

話すことが5年分たまってるんだ
1晩あっても足りやしない


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