full of love~わが君の声、君の影~

その後もマネージャーが来たり電話をかけまくったり
仕事上の対応に追われた

あっという間に消灯時間になる
だけど今の俺にはそんなこと関係ない

さあ何から話そう
幽霊に面会時間関係ないし
幸いココは個室だ

「もしかしてずーといたの?」
『うーんだいたいね。若い未亡人と私を比べて“歳食ってる”とか言ってたでしょ』
口調が詰問調になる

「あれ聞いてたの!?いやあ~あれはその~ってあ!もしかして頭なぐった?」
言った直後頭がズキっとした
あの間といい痛みといい懐かしい感じだった

『そうよ。思わず力入っちゃった』
「透けてるのにそんなこと出来るの?」
何故かそこでばれてヤバイっという顔をした

『うーんたまにね・・集中するとできるっていうか・・』
「へーそうなんだ・・ああ!映画の“ゴースト”みたいなカンジ?」
『うんそうそう!』
「えーじゃあ今まで知らない内に突っ込まれてたのか俺?」
『ううん、やってないやってない』
今日子さんはウソをつくと目を見開くクセがある

「ホントかあ~?」
『えーと・・5回くらい?』
「・・・」
『ホントよ!あんまり触れないように気をつけてきたんだから・・』
このやりとりが懐かしい
ちっとも変わらない

「触れたかった?」
『そりゃ・・』
今日子さんの顔が照れたように見える
だがやはり顔色は変わらない

「今思いっきり触れていいよ」
と俺は今日子さんの前に手を差し出した
今日子さんの手が乗せられる
(あっ手が透けてない)
感触が伝わる
だけど・・
ふっと感触が消える
透けた手に戻る
今日子さんはふーっと息を吐く
「疲れるの?」
幽霊でも?

『うん・・ちょっとね』
顔色は変わらない
『がっがりしたでしょ』
「え?」
『温かくもなければ冷たくもなくて』
「え・・いっやあうん・・がっがりなんてしてないよ。ただ少し驚いているだけ・・まあ十分このシチュエーションは驚きだけどね」
『あはははっそれもそうか』

あ。今日子さんが声をたてて笑ってる

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