full of love~わが君の声、君の影~

約束の日
今日子さんのお墓の前で待ち合わせた

俺は約束の10分前に墓地に着いた
花と水桶を持って今日子さんのお墓へ向かうと
墓の前にはすでに若い男がじっとそのお墓を見据えて立っていた

俺が近づいていくとその男はすぐにこちらに気がついた
ものすごく緊張しているのがわかる
こちらだって緊張している
でも頭の中は自分でも驚くほどに冷静だった

もう28歳になるはず。
その割には髪は薄く、頬はこけ、老けて見えた。

俺は直立不動の男の前まで来た
とその男はすぐさま膝をつき土下座の格好となった
「申し訳ございません!大事な奥様を・・本当に本当に申し訳ございません!」
声も体も震わせながら頭を地面にこすりつけるように何度も何度もそう言った
その声にウソがないことはすぐにわかる

だけど
男が謝れば謝るほど
心の奥底に閉じ込めておいたはずの
ドス黒い感情が頭をもたげる

知らず知らずのうちに右手のこぶしを硬くする

よっぽどこいつが反省の色もないムカつく奴なら
迷わず殴れただろう

今この瞬間も自分の足元に見える背中を蹴り飛ばしてやりたいっ
その衝動をジッと目を閉じ抑え込む

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