full of love~わが君の声、君の影~

こういうまどろっこしい話は苦手だ
前から思っていた。好きなら周りがどう思おうが奪ってしまえばいいのに。
「そ、それは・・」
「あの2人、自分の気持ちにも相手の気持ちにも気づいている。なのにそれを相手に伝えることも確かめることもせずにここまできた。なんでだと思う?」
「それは・・お母さんが結婚していたから?」
「違うよ。自分が傷付くのが怖かっただけだよ。本当に好きならそんなこと関係ないだろう?両想いなら尚更だ」
「でもそれは私や周りを傷つけないようにっていう・・思いやりなんじゃないですか?」
「本当にそう思うの?」

今度は俺から彼女の目を見る
強いな・・目をそらそうとしない
根負けして俺からそらす

ガタン!椅子をならして彼女が立ち上がる
「わかりました。神島さんってクールそうに見えるけど本当はあったかい人なんじゃないかって思っていたのに・・イメージ通りの冷たい人なんですね!頼む相手間違えました!」
テーブルの上の封筒をつかむと踵を返してドアへ向かう

“冷たい人”なんて言われ慣れているのに
何故か胸の奥がズキンと音を立てた

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