full of love~わが君の声、君の影~

「はいって・・いいの?」
「はいもちろん」
「もちろんって・・だって5年前俺は君にひどいことした・・」
「そうですね・・あの時は夜になる度泣いていました」
ああやっぱり;

「忘れようと思いました。でもTVつければ出てるし、街を歩けば曲が流れているし」
「・・スミマセン」
「でも誰かと付き合ってみても話し方が違う・・声が違う・・って神島さんと比べてしまって続かなくて・・どうしたらいいかわからなくて・・お母さんに相談したんです」
今日子さんに?

「そしたらお母さん『無理して忘れることはない』って『ずっと好きだった人を昨日今日で嫌いになんてなれないでしょ?だったら忘れることない』って」
今日子さんらしい

「それから『男は自分のことを好きだって言ってくれた人のこと忘れないもの』だとも言っていました
『今はまだ妹でも5年もたてばあなたも大人よ。その時まだ好きだったらまた告ってみれば?』なんて」
彼女が今日子さんの口調をまねる
懐かしさがつのる

「結局私が言う前に言われちゃったけど・・」
すっと伸びた彼女の細い指がシルバーのストラップに触れる
自分に触れられたように胸がドクンと鳴る

彼女は俺に向き直り極上の笑顔をする
「私はずっと神島さん一筋ですから」

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