full of love~わが君の声、君の影~

「高木部長の奥さんだったって?」
パーティーの数日後TV局の楽屋で神が突然切り出した。
「え?なんで知ってんだ?」
「チーフに集合写真見せてもらった。俺も関係者だからな」
そういえば撮ってたな・・

「お前1回しか会ってないのに良く分かったな?俺でも人違いかと思ったくらいだ」
「俺は1度会った女性の顔は忘れない。例え射程外でもな」
俺が耳がイイというなら、こいつは目がイイのか?


「印象はちょっと違ったけどな」
「そうだな・・ちゃんと着飾ってたもんな・・」
って言ってもよくは覚えていない。
スーツっぽい格好だったが、スカートが長かった気がする・・髪はきっちり結いあげられていて、胸に花をつけていた。パールのネックレスもしていた。そういえばイヤリングも・・えっと・・それから・・

「それから電話してみたのか?」
「は?あ、ああ電話か;まずいだろ・・後ろめたいことはないとはいえ」
「ないのか?」
「ねえよ!」
「そうか」
「どうせたいした話してねえし・・天気のこととか、子どものこととか、仕事先の店長のグチとか・・俺もその日あった面白かったこととか本当にたいしたことじゃない・・」
「・・そのたいしたことない話をこの1年してたのか」
「ああ?」

急に神が前のめりになる
「かけるとどれくらいの時間してた?」
「あ?そんなこと聞いてどうする」
「いいから」
「・・・だいたい1時間だよ。平日の昼間の10時~11時の間しか無理って言われてたから」
「10時?お前がオフの日の10時?」
「オフとは限んねえよ・・午後からの仕事の時とかでもかけれたし・・ってかなんだこの尋問」

神がまじめな顔をして言う
「それって恋って奴じゃねえのか?」
「は?」
「だって朝の弱いお前がきっちり10時までに起きて電話?たいした話でもないのに1時間?気のない相手にそんなことできるか?」
「別に・・できるだろっ1時間なんてあっという間だぞ?」
「できねえよ!少なくとも俺には出来ない。付き合っている女とでも出来ない」
「まあお前は無理だろうな;・・だから前にも言ったろ?俺は彼女の声が好きなの、癒されんの。うーん・・そうそう!カウンセリングみたいなもんだよ」
「カウンセリングって;お前いくつだよ」
「は?」
神は呆れ顔をして「便所~」と言いながら部屋を出て行った。


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