薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
そのあと、料理を手伝うことも許されなかった私は、更にベッドルームから出ないように指示までされてしまった。

仕方なしに、ベッドに横になりながらスマホをいじり出す。

でも、キッチンで野菜や肉を相手に格闘しているであろう優生が気になってしまい、そろりとドアを開いてベッドルームを後にする。

足音を立てないよう廊下を進み、キッチンと繋がっているリビングのドアに耳を押し当てた。
すると、ガッシャンという鋭い物音が漏れ聞こえ、「大丈夫!?」とドアを勢いよく開ける。

「何してんだ。大丈夫に決まってるだろっ」

不機嫌全開とばかりに、眉間に皺を刻んだ優生にギロリと睨まれてしまう。
『戻ってろ』とばかりに手を払われて、『どうか、お気に入りの輸入食器が割られませんように』と祈りながら、ベッドルームに戻った。




それから数時間後――。
夕方になり、近くにある大型ショッピングモールがライトアップされ始めた。

沈んでいく夕日がゆっくりと闇夜を引き連れる瞬間が、一日の景色で一番好きだなぁと思うのに、吐く息が瞬く間に白く消え失せてしまうこの季節は、それを楽しむ時間も与えてはくれない。
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