青空の下月夜に舞う
「“まみちゃん(ガラケー)”って入れていい?」


ふふふっと笑いながら楽しそうに、私の番号を登録しているみたい。

その横顔に。
ちょっとだけほだされた自分。


「あの……」


隣に座って、声を出す。「んー?」と。
スマホに視線は向けたまま、返事をされた。


「もしかしなくても。バイト終わるの待っててくれたんですか?」


違う、の言葉はきっと帰ってこない。
あの場面で“偶然”はあり得ない。


バス停の前を次々に通りすぎる、車のライトが、裸女の髪をキラキラと反射させる。

私の問いに、目を丸くした裸女は……


「だってまみちゃん帰っちゃってたし。昼休み私寝てたからさー。連絡出来なくて。下駄箱行ったけど“まみ”って2年三人もいんだもん。しかも一人は帰ったって言われたし」


裸女の言葉に、僅かな罪悪感。





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