青空の下月夜に舞う

バイト先に着いたのは58分。
ギリギリ間に合った……

足が震えていた私は、ヘルメットを被ったまま店内に入り、店長に突っ込まれたけど。


祐也にお礼言うの忘れたな。

明日ヘルメット返さなきゃ。


レジに立ってパンを袋に入れながら、バイクに乗ってあんなスピードを出す祐也を、知り合って初めて尊敬した。

乗り物は全身を覆っているものがいいに限るな。

私絶叫系も無理だもん。
あんな乗り物が大丈夫な訳ない。


あ、祐也って免許ちゃんと持ってんのかな。あのバイクだって普通じゃあんな音しないでしょ。


家がなくなるって言うのに、祐也のバイクに乗ったお陰で?頭が暗い方へ行かないで済んだ。



バイトも終わり、帰路に着くと、いつもより繁華街が騒がしい気がしたけど。

荷造りしなければいけない私は、そんな事に関心を持つ暇もなく。

自宅の前に着き、鍵を開けようとした時。
隣が空き家になっているのが目に入り、少しだけ心に穴が空いた気がした。
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